フォトニック結晶レーザ(PCSEL)の設計手法

レーザーシミュレーションとアクティブ FDTD の連携

Photon Designが開発・提供する半導体レーザーシミュレーションソフトウェア「HAROLD」とナノフォトニクスシミュレーションソフトウェア「OmniSim」,市場をリードするこの2 つのソフトウェアを連携させる事で,FDTD(有限差分時間領域法)を利用したフォトニック結晶レーザー(PCSEL)の設計を容易にかつ厳密に行うことができます。

本稿ではPCSEL 設計に利用する各ソフトウェアの機能について紹介します。

1)レーザー材料の利得スペクトルの計算

HAROLD は,レーザーのエピタキシー構造を構築し,材料スタックの利得スペクトル(gain spectra)を計算するための厳密なシミュレーションを実行します。

利得スペクトルデータは,異なるキャリア密度について波長の関数としてレーザー利得を示す一連の曲線データです。このHAROLD で得たデータは,OmniSim の伝播シミュレーションにおいてレーザー領域の動的利得モデルを利用するアクティブFDTD計算機能に転送し使用できます。

アクティブFDTD 計算機能では,キャリア拡散,自発再結合,誘導再結合,電流注入などのレート方程式によってモデル化されたキャリア密度の関数としての利得を考慮したシミュレーションを実行します。

2)フォトニック結晶構造の検討

OmniSim は,フォトニック結晶格子を作成し,格子に「原子(Atom)」(例えば,材料層の空孔)を追加した構造を形成できます。個々の原子を除去することで,光を閉じ込め,表面発光を生み出すレーザー共振器をモデル化します。

フォトニック結晶格子のバンドダイアグラムの計算には,OMNISIMのバンドアナライザー機能(平面波展開法)が有効です。設計者は目的のレーザー発振波長に適した構造をこの機能を使用することで調整し,光を中央の空孔に閉じ込める構造を容易に計算することができます。

OmniSimの2Dバンドダイアグラム

最適化機能の組み合わせから Q 因子計算と静的利得モデルの利用

1)自動最適化

OMNISIM のバンドアナライザー機能と最適化ツール「KALLISTOS」を組み合わせることで,格子,原子,またはレーザー共振器(サイズ,形状,位置)の変数を自動で調整し,目的のレーザー発振波長をサポートするのに理想的なフォトニック結晶の仕様を自動設計することも容易に実現できます。

2)アクティブ FDTD 計算機能と Q 因子計算の実行

OmniSim のアクティブFDTD 計算機能は,標準的なFDTD伝搬シミュレーションにキャリア ダイナミクスを追加した計算を行うため,フォトニック結晶レーザー構造のシミュレーションに最適です。

このアクティブFDTD 計算機能に実装されている「キャリア加速係数機能」を利用すれば,FDTD 法でシミュレートできる計算能力よりも桁違いに長くなるレーザー発振領域における電子のキャリア寿命の計算について,キャリアダイナミクスの速度を向上させて,PCSELデバイスに対して素早く正確な結果を得ることができるとともに,「Q 因子計算ツール」を使用する事で,従来のフーリエ変換法よりも数倍速くレーザー波長と線幅を決定することが可能で,レーザーの共振空洞の性能に関する早期検証を実現しています。

フォトニック結晶レーザの電磁場分布シミュレーション

さらには,静的利得モデル(static gain model)機能を利用すれば,前述の動的利得モデルよりも単純化したPCSEL モデルを作成してレーザーの利得をキャリア密度ではなく強度のみの関数として定義し,計算時間を大幅に短縮した検証が可能になっています。

HAROLDとOmniSim,2つのソフトウェアの連携手法を利用すれば,FDTD シミュレーションにレーザー利得特性を動的に組み込むことで,フォトニック結晶レーザーやその他のマイクロキャビティレーザーなども正確かつリアルにモデル化させて計算させることが可能であり,ユニークな機能を利用して早期検証を実現します。